市民公開シンポジウム

『咬むもの・咬まれるもの』−人類進化から食育を考える−

 動物にとって「食べる」ことは、生命を維持し、子孫を残すために必要不可欠な、最も基本的な行動です。そのため、動物は「食べる」ことに適応するように進化してきました。ヒトもその例外ではなく、「食」の変遷とそれに対する適応の歴史が現在の私たちを形作っています。ところが、近年の科学技術の発達により、私たちの食生活は急激に変化してきました。その結果、生活習慣病、肥満、不正咬合、歯列不正、顎の疾患など、現代人は「食」に関わる多くの問題を抱えるに至っています。
 いま、食育の必要性が叫ばれています。子供の教育には知育、徳育、体育が重要とされていますが、それに加えて「何を、どう食べるか」という食育が子供の将来にとって大変重要だということです。ハンバーガーをペットボトルの水で流し込むような食生活で良いのでしょうか。咬むことにより脳の細胞が活性化されるという研究結果も出ています。朝食を規則的に、家族と一緒にする子供は学校の成績も良いというデータもあります。ヒトの歯は他の動物より厚いエナメル質からできています。本来、固いものをもっと食べられるようにできているのです。しかし、この機能は今では眠ってしまっていると言って良いでしょう。
 「食べる」ということは、「食べ物」とそれを「食べる者」とがあって成立する行動様式です。「食べる」という観点からヒトの進化を考えるときにはその両方をいつも考える必要があります。本シンポジウムでは、「咬むもの・咬まれるもの」、すなわちヒトの咀嚼(そしゃく)器と食物の相互作用の歴史に関する最新の研究成果を紹介し、「食」に焦点を当てて人類の進化と未来を考えていきます。そもそも私たちの祖先である初期人類が適応してきた「食」とは何だったのでしょうか? 一方、飽食・グルメの現代を生きる私たちの「食」は、私たちの未来にどのような影響をもたらすのでしょうか? 本シンポジウムではこうした人類進化史的アプローチを通して、「食」に関わる現代的問題の根本原因と対策について考えていきたいと思います。育ち盛りの子供たち、成長期の中・高生徒、ダイエット中の若い女性たち、中年太りが気になる方々、皆さんに聞いていただき、自分の食育に役立ててもらえればと思います。