サテライト・シンポジウム

京都大学人文科学研究所国際シンポジウム
国際人類学民族学会議(IUAES) 2002 京都会議
人種概念の普遍性を問う
-植民地主義、国民国家、創られた神話-

Is Race a Universal Idea?: Colonialism, Nation-States, and a Myth Invented

●シンポジウム趣旨

人種概念は生物学的概念としては有効ではないという見解が科学者の間で一般的になりつつある。最新の人間遺伝学や集団遺伝学などの科学的知識によれば、ヒトは「人種」という用語が意味するような明瞭で排他的な境界線によって生物遺伝学的集団に区分されえないことが明らかとなっている。もし人種概念が生物学的に実在しないのであれば、なぜ、どのようにしてこの概念は構築されたのであろうか。人種概念とは人類に普遍的に存在するものか、あるいは近代以降の産物なのだろうか。この京都シンポジウムでは、とくに人種概念と植民地主義、国民国家との関係に焦点を当てる。18世紀からヨーロッパやアメリカで誕生した人種分類論と19世紀後半から20世紀前半に蔓延した科学的人種主義は、このシンポジウムで吟味するように、日本、インド、東アフリカを含めて、世界の多くの社会に深く浸透することとなった。しかし「人種」とは単に欧米からの輸入概念なのか、あるいは類似した政治的経済的状況から生み出されたものなのか。日本初の企画として、アメリカ、イギリス、インド、日本、アフリカの人種概念に関するさまざまなディシプリンの専門家が集い、この重要な問題について議論を交わす。

会期            2002年9月19日(木)
会場            国立京都国際会館  ROOM D 


発表プログラム

第一部 
1.「人種概念の普遍性を問う--問題提起--」

竹沢泰子(京都大学)

2.「 「人種」―社会的構築物か生物学的リアリティか― 」

ローリング・ブレイス(ミシガン大学)

3.「人種よさらば」

斎藤成也(国立遺伝学研究所)

第二部
1.「19世紀ヨーロッパにおける人種と不平等―人類の身体と歴史―」

ロバート・ムーア(リヴァプール大学)

2.「北米における人種イデオロギー」

オードリー・スメドリー(ヴァージニア・コモンウェルス大学)

3.「帝国日本の人種および人種主義」

冨山一郎 (大阪大学)

第三部
1.「人種主義と部落差別」

黒川みどり(静岡大学)

2.「植民地主義、カースト主義、人種の神話」

スバドラ・チャンナ(デリー大学)

3.「人種主義的アフリカ観の残影-「セム」「ハム」と「ニグロ」」

栗本英世(大阪大学)